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内痔核の手術、結紮切除術(半閉鎖式)

渡邉医院で行っている内痔核に対しての痔核根治術についてお話します。
渡邉医院では内痔核に対しては基本は高位結紮切除術・半閉鎖式を行っています。
 1998年に出版した「渡辺肛門科 標準手術術式」で私が描いたイラストを使って内痔核の手術をお話したいと思います。
 渡邉医院では1%塩酸プロカインによる局所麻酔で手術を行っています。
 1.十分なストレッチング
局所麻酔を行った後、指を使ったり、肛門鏡を使って十分なストレッチングを行っています。これは内肛門括約筋の緊張が強いと術後の痛みが強いというこれまで調べてきた結果からくるもので、術前に十分にストレッチングをすることで、内肛門括約筋の緊張をとって、術後の痛みを軽減させるという意味があります。また十分ストレッチングすることで肛門が十分に広がり、手術の視野がしっかり確保できることにもなります。
 2.内痔核を切除するためのデザインを考える
 内痔核の性状は、患者さん一人一人違います。患者さんの持つ内痔核をどう剥離して切除したらいいかのデザインを考えます。このデザインをどうするかが一番重要だと考えています。どう皮膚を剥がしていくか、どの範囲まで剥離していくかなど、手術を始める前に頭に思い描き、手術終了時の傷の具合をイメージします。それが終ったらいよいよ手術を始めていきます。
 3.ドレナージの切除範囲を決める
内痔核のある部位の肛門縁とそこから少し離れた部分、約2㎝の部分の2箇所をコッヘルで把持します。ドレナージをつくる部分です。
 4.皮膚の剥離
把持した外側のコッヘルから肛門縁を把持したコッヘルまでドレナージ創として皮膚を剥離していきます。花びらの形の様に皮膚一枚を剥離していきます。花びらの形の様に皮膚に切開を入れると、肛門縁から離れたほうのコッヘルを手前に引っ張っていくと、それだけで皮膚は剥がれてきます。ところどころ突っ張る部分は切除し、肛門縁まで皮膚を剥がしていきます。ジョキジョキ切らずに剥離するので出血もあまりありません。肛門縁まで剥離できれば、まず一度出血の有無の確認をしています。止血の際はバイポーラ凝固止血器での凝固だけで十分止血可能です。
5.内痔核の剥離
肛門縁まで皮膚が剥離終わったら内痔核の剥離に入ります。その際に、肛門縁の創を2本のコッヘルで把持して左右に広げることで、内痔核の剥離するラインがはっきりします。内痔核の剥離は、筋層に切り込まないように注意して、粘膜と内痔核を形成している静脈瘤のみを剥がしていくといったイメージで剥離を進めていきます。内痔核を剥離していくと、mucosal suspensory ligamentという靭帯が出てきます。この靭帯を切除していくとで、内痔核を含めた粘膜が、ズルズルと肛門の外に引き出すことが出来ます。そのようなことを繰り返していくと、内痔核の根部まで綺麗に剥離することができます。
 ここで、靭帯を切断して内痔核を形成する静脈と粘膜だけになる程度まで周囲の組織から剥離することも、術後疼痛の緩和に影響すると考えています。周りの筋層や靭帯などを含めた「塊」としたまま根部を結紮することも術後の疼痛の原因になると考えています。また内痔核を切除した後の断端が少なければ、晩期出血を起こす可能性も低くなると思います。できるだけ根部結紮する部分は少なくすることが大切だと思います。
 6.根部結紮
十分に内痔核を剥離した後に内痔核の根部を糸で結紮します。この際は貫通結紮をしています。この根部を結紮した糸で、肛門上皮を連続縫合で半閉鎖していくので、片一方は長くして根部を結紮します。結紮した糸で、根部結紮した部分から少し外側に約5mmのところにもう1回糸をかけて根部結紮しています。これは剥離した粘膜の弛みや肛門上皮の弛みを中の方に引き込んで皮垂が出来ないようにする目的で結紮しています。
 また内痔核を複数切除する場合は、この内痔核の根部を結紮する高さを少し変えて、同一面上に結紮部位がならないようにも工夫しています。同一面上に結紮部分が来ると、術後の肛門の狭窄になる可能性があるからです。
 7.半閉鎖
 根部結紮が終ったら最後に肛門上皮を連続縫合で閉鎖していきます。根部結紮した剥離された内痔核は直ぐに切除せずにそのままにして、半閉鎖していきます。これは内痔核を切除せずそのままにしておくことで、これを少し引っ張ることで、半閉鎖する部分の視野がしっかり確保でき、縫合しやすいからです。根部から肛門縁まで縫合した後に剥離した内痔核を切除します。
 8.創の形大きさ、出血の有無の確認
最後にドレナージ創の大きさや形を確認します。どうしてもドレナージ創が小さすぎると、先にドレナージ創が治ってしまい、肛門内の傷が治りきらずに取り残されてしまうからです。どちらかと言えば小さすぎるよりは大きいほうが具合よく治っていきます。ドレナージ創が大きいからと言って、痛みが強くなったり、肛門狭窄の原因にはなりません。最後にドレナージ創や根部結紮した部分からの出血が無いかを確認して手術を終了します。