「輪ゴム結紮法で痛い理由」
輪ゴム結紮法とは
内痔核の治療方法に輪ゴム結紮法という手術方法があります。
内痔核の根元に輪ゴム結紮法の輪ゴムをかけて、内痔核に行く血液の流れを遮断して、内痔核を壊死脱落させる、腐ってとるという方法です。
輪ゴム結紮法の適応
輪ゴム結紮法の適応は、排便時に内痔核が脱出するも過ぎに戻る第Ⅱ度の内痔核や、脱出しても自然に戻らず、指で押し込む第Ⅲ度の内痔核。またされに悪化して脱出したままで、戻すことが出来ない第Ⅳ度の内が適応ですが、いずれも輪ゴム結紮する道具の輪っかの中に入る程度の大きさが適応になります。また、肛門上皮といって、肛門の出口から約2~3cmほど奥まで、皮膚の部分があります。この肛門上皮の部分の脱出が大きな内痔核は適応になりません。一番輪ゴム結紮に適した内痔核は、内痔核ができる粘膜部分だけが脱出してくる内痔核です。ですから静脈瘤型の内痔核よりも、粘膜脱方の内痔核の方がより良い適応になります。
輪ゴム結紮する際には基本的には麻酔はしなくてもできます。無麻酔下で行います。また筒型の肛門鏡を使って、内痔核をよく観察しながら輪ゴムをかけていきます。ですから適応をしっかり選んで、適切に輪ゴム結紮すると痛みはほとんどありません。
輪ゴム結紮法で痛みがでる二つの理由
ではどんな時に輪ゴム結紮をして痛みが出てしまうのかです。
この理由には大きく二つあります。
一つ目の理由
一つ目は、先ほど輪ゴム結紮法の適応でお話しましたが、肛門上皮の脱出が大きな内痔核に対して輪ゴム結紮をしてしまい、肛門上皮に大きく輪ゴムがかかってしまった場合です。肛門上皮の部分は痛みを感じる部分です。ここに輪ゴムがかかってしますと痛みが強く出ます。また輪ゴム結紮の適応である内痔核に輪ゴムをかけても、この肛門上皮に輪ゴムがかかってしまうと、痛みが強く出ます。ですから、輪ゴム結紮が出来る内痔核かどうかをしっかり見極めることが一番大切です。また輪ゴム結紮する際には、肛門上皮に輪ゴムがかからないようにかける技術が必要になります。肛門上皮に輪ゴムがかかってしまうと痛みだけでなく、内痔核が壊死脱落した後に、肛門上皮に傷がのこり、裂肛様になったり、深く潰瘍がのこり、輪ゴムが脱落した後も、排便時や排便後の痛みが残り、場合によってはその痛みが強くなり、再度手術が必要になる場合があります。
二つ目の理由
二つ目は、内痔核を大きくつまんでしまい、筋層まで輪ゴムがかかってしまった場合です。内痔核は粘膜の下にできます。ですから輪ゴムをかける場合は、筋層に輪ゴムがかからないように注意深く輪ゴムをかける必要があります。筋層にまで輪ゴムがかかると、痛みだけでなく、輪ゴムが脱落した際に内痔核の根元から、動脈性の出血を起こしてしまうことがあります。
輪ゴム結紮には正しい適応と正しい手技が必要
このように、輪ゴム結紮法は比較的簡単にできるのですが、輪ゴム結紮が出来る内痔核かどうかの適応を間違ったり、輪ゴムをかける場所、そして深さを誤ると輪ゴム結紮後の強い痛みや場合によっては再度の手術を要したり、また動脈性の出血を起こす可能性があり、慎重に適応を選び、正しい手技で行わなければなりません。決して輪ゴム結紮法は万能の治療方法ではありません。