肛門の手術を行った後の経過で、とても大切なことは、術後の出血、疼痛、そして排便の管理です。この三つが、手術後とても大切なことだと考えています。
まず痛みです。
裂肛の術後の疼痛ですが、裂肛の手術は排便時の痛みをとることが一番の目的です。ですから、裂肛の手術をした後、排便時の痛みはスッと取れます。排便時の痛みが強かった患者さんほど、術後の排便時の痛みは楽になります。
痔瘻の場合は、どうしても排便時の痛みはあります。でも痔瘻の根治術を行った約60%の方は、術後最初の便の痛みはなかったと答えてられます。
どうしても排便時の痛みがあるのが、内痔核に対しての痔核根治術後の排便時の痛みです。ただ、普段は痛みがなく、排便時の痛みがあるのですが、術後7~10日目を過ぎると、排便時の痛みもスッと楽になります。また排便時の痛みの程度は、内痔核の切除個数にも関係しています。1か所の人、2か所の人、3か所の人を比較すると、1か所の人は2か所以上の人と比べるとずいぶん楽です。2か所と3か所の人を比較すると、排便時の痛みに差はありません。1か所ですむか、2か所以上になるかで排便時の痛みに差がでてきます。
次に出血ですが、
裂肛、痔瘻に対して手術をした場合は、術後24時間以内、特に術後3時間以内の早期出血がなければ、その後の出血で、麻酔をしてもう一度止血術をしなければならない出血はまずありません。
内痔核では、この術後24時間以内、特に3時間以内の出血以外に、術後7~10日目頃に内痔核の根部の動脈の根部を結紮した部分からの晩期出血があります。この晩期出血が起きる時期を過ぎると、再度麻酔をして止血しなければならないような出血はまずありません。
肛門の手術で一番患者さんにとっての不安が、この出血です。
さて、最後の排便の管理ですが、これが一番大切で、手術をして治った後でも一番大事なのが、この排便です。どうしても頑張っている時間が長かったり、便秘が続くとまた再発の可能性が出てきます。排便の調整が肛門疾患の発生、再発を防ぐのに最も大切だと思います。
肛門の手術の後は、どうしても「便をすると痛みがあるのでは?」「出血したらどうしよう?」と思うとどうしても排便することが怖くなり、便が出にくくなってしまうことがあります。この場合は、緩下剤を飲んで楽に便が出るようにしていくことが必要です。排便時の痛みが楽になり、出血が少なくなると、おのずと便の調子もよくなってきます。便の状態で、緩下剤を減らしていけばいいです。また、特に内痔核の手術をした場合、肛門の状態は正常ではありません。どうしても便の出方は悪くなると思います。傷が治り、正常の肛門の動きをするようになると、これもまたおのずと気持ちよく便が出るようになります。このように、排便時の痛みが楽になり、傷が治っていくまでは、必要に応じて緩下剤を使っていく必要があると考えます。
以上のように、肛門疾患の術後は、術後の出血、疼痛、そして排便の管理がとても大切になります。