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渡邉医院の内痔核に対する手術の変遷

2018.11.25

 内痔核に対しての手術方法は、時代とともに変わってきました。
渡邉医院でも、祖父が渡邉医院を開設してからもうすぐ90年になります。祖父の時代、そして父の時代、そして私の時代と、時代とともに内痔核に対しての手術方法や治療方法は随分変わり、進歩してきました。
まず、祖父の時代は、内痔核に対しての手術方法は、ブラーツ法という方法での手術だったようです。実際、祖父が手術をしているところを見たことはありません。父が祖父の手術に関して話している内容から推測して、祖父はブラーツ法だったと思います。
ブラーツ法は脱出してくる内痔核を鉗子で挟み切除した後、創面を縫合するという手術方法です。今ではほとんどされていません。
内痔核に対しての手術方法がガラッと変わったのが、父の時代です。ミリガンモルガン法と言って、現在行われている基本となる、結紮切除という手術です。私の父は、このミリガンモルガン法、結紮切除術を知って、「目から鱗だった。」と言っています。内痔核を根部まで剥離していき、内痔核の根部、動脈を結紮した後内痔核を切除するという手術方法です。現在の内痔核に対しての手術方法の基本となる手術術式です。肛門科をする以上、この結紮切除術はしっかりマスターすることが肛門科医となる必要最低限の条件だと思っています。
この高位結紮切除術をさらに進歩させたものが、半閉鎖式です。内痔核を根部まで剥離して、結紮して切除した後の、傷が出来た肛門上皮を縫合して、肛門の外側のドレナージ創は残しておくという方法です。
現在、私が行っている手術はこの高位結紮切除術・半閉鎖式です。その閉鎖方法を工夫したり、ドレナージ創をどう作るかなど、まだまだ改善するところがあると思っています。
こういった根治術の変遷の中に、輪ゴム結紮法など、以前からある手術方法が内痔核の大きさや性状をみながら行われています。
こういった内痔核を切除するといった手術方法の流れを大きく変えたのが、ジオンという痔核硬化剤の誕生です。硫酸アルミニウム・タンニン酸水溶液を内痔核に局注して、内痔核を縮小退縮させていく方法で、四段階注射法という方法で痔核硬化療法を行う方法です。これまで手術をすることで、どうしても肛門に傷を付ける、そういった治療方法から、内痔核に対して痔核硬化療法で、これまで手術をしなければ治らなかった内痔核を治すことが出来るようになりました。傷が出来ないので、患者さんにとってはいたみがなく、本当に楽な治療方法です。ただ、このジオンによる痔核硬化療法はどんな内痔核でも治すことができる万能の治療方法ではありません。ジオンによる痔核硬化療法で治る内痔核かどうかをしっかり判断して、適応を決めなければなりません。適応を間違えると、内痔核は治っていきません。また、痛みは伴いませんが、手術を治すところを注射で治す。注射した部分では、痛みはありませんがものすごい侵襲がかかっているということです。しっかりと経過を診ていくことが大切です。
このように内痔核に対しての手術方法や治療方法は大きく変わり、進歩してきています
。でもそれぞれのメリット、デメリットをよく理解して、今ある内痔核を治すのには、どの治療法が最も適しているのかを、しっかり見極めていくことがとても大切で重要となってきます。
自分が持っている内痔核がどんな内痔核か?そしてその内痔核を治すには、どの治療方法が最も適しているのかを肛門科医と相談しながらしっかり治していくことが必要だと思います。そういったいみからも医師としっかり話し、納得いく治療を受けてくださいね。