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裂肛・肛門狭窄に対してのSSG法

2019.07.15

渡邉医院では裂肛に対しての基本的な手術術式は側方皮下内肛門括約筋切開術(LSIS)です。でも慢性の裂肛で瘢痕が強く、肛門が硬い状態になっていたり、以前痔核根治術など肛門の手術を受けた患者さんが肛門狭窄を起こしてしまうことがあります。こういったLSISではどうしても肛門の緊張が取れないと判断したり、術後の狭窄で、肛門上皮そのものが少なくて肛門に狭窄を起こしている場合は狭窄を解除するために皮膚弁移動術(SSG法 sliding skin graft)を行うことがあります。
SSG法は、裂肛部分や瘢痕で硬くなった部分を切除して、狭窄を解除した後に、切除した部分の粘膜と皮膚を縫合します。そしてその外側に減張切開を加えて皮膚弁を作り、その皮膚弁を肛門管内に移動させる手術方法です。
実際の手術方法をお話しします。
1) まず肛門潰瘍やこのためにできた肛門ポリープや皮垂(skin tag)を切除します。
2) 硬く瘢痕化した内肛門括約筋の一部をメスで切開して肛門の狭窄を解除します。狭窄を解除する程度ですが、前回お話したLSISのときと同様に、私の指が2本入る程度に狭窄を解除します。この時、アイゼンハンマー氏型肛門鏡を入れて広げ、メスで切開すると必要以上に切開せずにすみます。これもLISIの時と一緒です。
3) 十分に狭窄を解除できたら次は粘膜と皮膚の縫合にはいります。この時に使う糸は、バイクリルと言って自然に溶けて吸収する糸を使っています。だいたい3~4か所粘膜と皮膚を縫合していきます。糸をかける際に、粘膜の方は皮膚と比べて組織が弱いので粘膜の方は少し大きくとって縫合していきます。少し筋層にかけることで術後早期に糸が外れてしまうことはありません。
4) 次は皮膚弁の作成です。粘膜と皮膚を縫合すると、その外側は少し突っ張ったような状態になります。この緊張をとるような要領で皮膚を切開していきます。皮膚弁は真正面、真後ろは避けて左右どちらかにずらすようにしています。真後ろの6時の方向でSSGを行うと治癒した後、縫合した部分が輪状に瘢痕を残す可能性があり、そこが突っ張ったような違和感を残してしまうことがあります。こういった状態にならないようにする必要があります。渡邉医院では左側臥位で手術を行うので、左にずらしています。
5) 最後に十分に狭窄が解除されているかを確認して、皮膚弁をつくることでできた皮膚欠損の部分の出血の有無を確認して、出血に対してはバイポーラによる凝固止血をして手術を終了します。
このようにして強度の肛門狭窄や瘢痕で硬くなった裂肛の手術を渡邉医院では行っています。