9月になって、血栓性外痔核で受診される方が少し多いかなという印象があります。
血栓性外痔核は、肛門の外側の静脈に血栓が詰まって腫れて痛い病気です。
もともと、人間は立って歩く二足歩行なので、肛門の部分の血流は少し悪いです。そんなところにに、冷えたり、忙しかったり、疲れていたり、また寝不足だったり、ストレスがかかるとさらに血液の流れは悪くなってしまいます。
そして、ストレスがかかると血栓もできやすくなってしまいます。ストレスがかかると、血小板がくっつきやすくなり血栓ができやすくなります。そんないろんな条件が重なって、さらにそこに便の調子が悪くて排便の時にグッと頑張ったり、重たいものを持ったりしてお腹にグッと力が入った時など、例えば引っ越しなどで重たい荷物を持ち上げたときなどに血栓が詰まって、血栓性外痔核になることがあります。
ただ、血栓性外痔核はもともと持っていたものが、悪くなっていたくなったのではなく、たまたま今まで話したような条件がそろって、お腹が力が入ったときに運悪く血栓が詰まったものです。少し違うのですが、指を挟んで血豆ができるとか、ぶつけて青く内出血して腫れて痛いのと同じようなものです。ですから、極端なことを言うと、グッと我慢していると、何もしなくても自然に治っていきます。
ですから、血栓性外痔核の治療は、基本的には手術などをする必要はなく、保存的に治療します。ぶつけて内出血して腫れて痛くても、手術をしなくても自然に治っていくのと同じです。でも、手術で血栓を取ることもあります。それは、一つは詰まって血栓が大きい場合です。親指よりも大きな血栓が詰まってしまうことがあります。大きいと溶けて治るまでに時間がかかります。もう一つは、血栓が詰まって痛みが強く、仕事にならない。さらに痛くて寝てもいられないという時です。この場合も局所麻酔をして血栓を取るのですが、ほっておいても自然に治る血栓性外痔核を手術でとって、その後痛いと意味がありません。血栓を取ると痛みはスッと楽になります。でも反対に言うと、どんなに大きくても、どんなに痛くても手術をしなくても、自然に治っては行きます。
では治療法ですが、血栓性外痔核の一番の症状は、腫れて痛いということです。これに対しては、腫れを取ると痛みがとれるので、腫れをとって痛みをとる消炎鎮痛剤の座薬を使うと痛みがとれ、楽になります。血栓は自然に溶けるのを待ちます。いつも診察の時、血栓性外痔核に対して消炎鎮痛剤の座薬を1週間分処方します。「座薬がなくなって痛みなど何か具合が悪いことがあれば、受診してくださいね。」と患者さんにお話しするのですが、たいていの場合、受診される患者さんはいません。1週間で血栓がすべてなくなることはないと思いますが、消炎鎮痛剤を使うことで痛みがとれ、血栓がだんだん小さくなっていくので、「後は自然に治るから大丈夫だ。」ということになるのだと思います。血栓性外痔核の場合はこれでいいと思います。
患者さんに「また血栓性外痔核になりますか?」と聞かれることがあります。そんな時私はこう答えています。「今回、血栓性外痔核になったのでまたなる可能性はあります。では、今回血栓性外痔核になったのは初めてですか?初めてでしたら、こんな程度の頻度でしか起きませんよ。」と。
血栓性外痔核は自然に治っていきますが、痛みがあります。これは消炎鎮痛剤の座薬で楽になります。痛いときは早めに受診していただき、痛みを早くとるといいと思います。
血栓性外痔核の治療
2018.09.17